目次を開く
10Gの回線を引いても、ルーターのWAN側が1Gbpsなら、そこで頭打ちになります。入居に合わせて買うルーターを選んだので、その過程を残します。まだ買っていません。入居は11月で、この種の機器は値段がよく動くからです。
選んだのは NEC Aterm 7200D8BE
条件は4つでした。
- WAN側が10Gbpsであること
- LAN側に2.5Gbps以上のポートが1つ以上あること
- Wi-Fi 7に対応していること
- トライバンド(6GHz)は必須にせず、同じ条件なら安いほうを選ぶこと
家は群馬県前橋市の木造30坪の平屋で、2026年11月に入居します。仕事用と私用のパソコンはどちらも有線でつなぐので、無線に求めるのはスマートフォンとテレビ、スマートスピーカーの範囲です。
この条件で残ったのが NEC の Aterm 7200D8BE でした。価格.comの最安値は28,672円です(2026年9月17日時点)。ポートはWANが10Gbps×1、LANが2.5Gbps×1と1Gbps×3。無線はWi-Fi 7で、2.4GHzと5GHzの2バンドです。
候補にした3機種
| NEC Aterm 7200D8BE | ELECOM WRC-BE94XSD-B | NEC Aterm 19000T12BE | |
|---|---|---|---|
| 最安値(9/17) | 28,672円 | 26,800円 | 78,414円 |
| 帯域 | 2.4/5GHz | 2.4/5/6GHz | 2.4/5/6GHz |
| WANポート | 10Gbps×1 | 10Gbps×1 | 10Gbps×1 |
| LANポート | 2.5Gbps×1、1Gbps×3 | 2.5Gbps×3 | 10Gbps×1、1Gbps×3 |
| MLO | 2.4+5GHz(出荷時ON) | 2.4/5/6GHz | 対応 |
| 価格.comの満足度 | 4.08(64件) | 1.22(5件) | 3.87(20件) |
| 来客用の分離 | リモートワークWi-Fi | ゲストSSIDセパレート | リモートワークWi-Fi |
| 付属のセキュリティ | なし | F-Secure SENSE(1年) | なし |
価格は価格.comの最安値、満足度は同サイトのレビューの平均で、どちらも2026年9月17日に見た数字です。
ELECOMを見送った理由
最初はELECOMが1〜2万円安いと思っていました。調べ直すと、9月17日時点の差は1,872円でした。NECが2026年に2回値上げしたこともあり、同じ価格帯に並んでいます。
引っかかったのはレビューです。価格.comのWRC-BE94XSD-Bは5人のレビューで満足度1.22、内訳は星1が4人、星2が1人でした。内容は次の3つに集まっています。
- EasyMesh(中継機)の設定が説明書どおりに進まない
- 6GHzの電波が弱い、個体で差がある
- サポートの対応に時間がかかる
5件は少ないので、これだけで製品の出来を決めつけることはできません。Yahoo!ショッピングには「2台のメッシュで安定している」という声もありました。平屋30坪なら中継機を足さずに1台で届くはずなので、EasyMeshの不満は私には当てはまらない可能性もあります。
それでも、差が2千円弱なら、わざわざ評価の低いほうを選ぶ理由がありませんでした。
機能で見ればELECOMのほうが手厚い部分もあります。トライバンドで、LANの2.5Gbpsが3口あり、F-Secure SENSEというセキュリティ機能が1年分付きます。来客用のSSIDを本体の有線機器からも切り離せる点も、NECと同じことができます。一方で、通信の優先度を決めるQoSは仕様表にもマニュアルの設定画面にも見当たりませんでした。
トライバンドを見送った理由
6GHzを使うには、ルーターと端末の両方が対応している必要があります。我が家の場合、この点は問題になりませんでした。
- Galaxy Z Fold8 Ultra: au公式の仕様表で、6GHz帯にも802.11be(Wi-Fi 7)の記載あり
- iPhone 16 Pro: Apple公式の仕様でWi-Fi 7。国内でも6GHzにつないだ実測記事がある
- Google Pixel 8 Pro: 国内版はWi-Fi 6Eとして発売(メーカー公式ページでは確認できず、複数の記事による)
むしろ6GHzを使える環境はそろっていて、トライバンド機を買う値打ちはありました。それでも見送ったのは、次の理由からです。
値段の差が大きい。 NECのトライバンド機 Aterm 19000T12BE は78,414円(9月17日時点)で、7200D8BEより約5万円高くなります。
新しい機種で、評価がまだ落ち着いていない。 2026年1月下旬の発売で、価格.comの満足度は3.87(20件)。クチコミ掲示板には「MLOを有効にするとWi-Fi 6の端末が通信できなくなる」というスレッドがあり、返信が42件付いていました。
5GHzで家中に届く見込み。 30坪の平屋なら、中央付近に1台置けば端の部屋まで届く形です。6GHzは周波数が高く、壁や床を越えると弱くなるので、階をまたぐ家ほど不利になります。その意味では平屋は6GHzに向いた形ですが、5GHzで足りるところに6GHzを足すために5万円を払う理由は見つかりませんでした。
パソコンは有線。 6GHzの広い帯域が効くのは、高速な無線接続が要る場面です。我が家では仕事用も私用も有線でつなぎます。
なお、複数の帯域を束ねるMLOはトライバンド専用の機能ではありません。7200D8BEも2.4GHzと5GHzでMLOに対応していて、工場出荷時から有効です。ただし予備の回り道が2.4GHzになるので、6GHzを予備に使えるトライバンドほどの効きは期待できません。6GHzには、気象レーダーなどとの干渉を避けるための一時停止(DFS)がないという利点もあります。この2つは、5万円を払う理由としては弱いと判断しました。
買う窓口で2万円変わる
NECは2026年に2回、価格を改定しています。4月1日と7月1日で、7月の改定は原材料・人件費・物流費の上昇が理由と公式に案内されています。無線LANルーターの値上げ幅は4.4〜65.5%でした。
同じ製品でも、窓口によって値段が違います。Amazon限定の型番(AM-7200D8BE)は、6月30日の35,178円から7月1日に48,928円へ上がりました。約39%の値上げです(Keepaの記録をもとにした24wirelessの記事)。
9月18日に見たときも48,928円のままで、Amazon自身が売っている値段でした。ポイントが16%(7,828円相当)付くので、実質は約41,100円です。それでも価格.comの最安値(9月17日時点で28,672円)とは1万円以上の差があります。同じ型番でも出品者によって値段は変わるので、誰が売っているかまで見て比べる必要があります。
型番の末尾が違う限定モデルは、中身が同じでも値段が別に動きます。買うときは型番まで見て比べるつもりです。
TP-Linkを候補にしなかった理由
TP-Linkには安くて評判の良い機種が多いのですが、私は以前から漠然と「お行儀が悪い」という印象を持っていました。根拠を言えないまま避けるのも気持ちが悪いので、この機会に確かめました。出てきた事実を並べます。
- 2023年5月、Check Pointが、中国系の攻撃グループがTP-Linkのルーター向けに細工したファームウェアを仕込み、欧州の外交機関を狙ったと報告しました(Check Point Research)。
- 2024年10月、Microsoftが、ピーク時に1.6万台を超える機器で作られたネットワークが、パスワードを総当たりする攻撃に使われたと報告しました。多くがTP-Link製のルーターとされています(Microsoft Security Blog)。
- 米国のCISAが公開している「実際に悪用された脆弱性」の一覧に、TP-Linkの脆弱性が複数載っています(CISA KEV カタログ)。
- 2026年2月、テキサス州が「ベトナム製と表示しているが部品はほぼ中国製」「中国政府系のハッカーに悪用されうる製品を安全と偽って売った」としてTP-Linkを提訴しました(テキサス州司法長官の発表)。
一方で、TP-Linkだけが狙われているという単純な話でもありません。
- 連邦レベルでのTP-Link製品の禁止案は、2026年2月時点で棚上げされたと報じられています(9to5Mac)。
- 2026年3月にFCCが打ち出した新規の輸入・販売の規制は、TP-Linkに限らず米国外で製造された消費者向けルーター全般が対象です(CNET Japan、INTERNET Watch)。
- TP-Link側は、本社機能を米国に移したこと、製造はベトナムであることを説明し、容疑を否定しています(TP-Link 日本法人の掲載する声明)。競合他社を信用毀損で逆提訴もしています。
日本でも、過去に1件ありました。2017年、TP-Linkの無線LAN中継器が、インターネットにつながっているかを確かめるために、ファームウェアに直接書かれたNTPサーバー(時刻を合わせるサーバー)へ高い頻度でアクセスし、福岡大学が公開していたNTPサーバーに負荷をかけていた、というものです。パケットを解析した技術ブログは、5秒ごとに問い合わせが飛び、月に700MB以上の通信になっていたと報告しています(Ctrl Blog)。TP-Linkジャパン自身も2017年12月に、福岡大学の名前を挙げて負荷の軽減に取り組んでいると公表し、機種ごとに修正したファームウェアを出しました(TP-Linkジャパンのお知らせ)。対象は中継器でルーターではなく、2018年3月には対応済みと案内されています。
一方、ネットでよく見る「外部のサーバーへ勝手に通信している」という話そのものは、公的機関の見解を見つけられませんでした。私が確かめられたのは、上の中継器のように公表されて修正まで終わっている個別の話までです。
私の結論は「TP-Linkが危険だと断定はできないが、判断がつかないうちは家の中心に置かない」です。
入居後に確かめること
この記事は買う前の検討です。入居したら次を確かめて、運営者のホッピング記録に追記します。
- 30坪の平屋を1台でカバーできるか。届かない部屋があるか
- 有線での実測がどのくらい出るか
- 来客用のSSIDが、本当に家の機器から切り離されているか
次の記事では、家族と来客のネットワークを分ける設定と、回線側のホームゲートウェイとどう併用するかを書きます。
ルーター選びのよくある質問
- 1G対応のルーターはWAN側が1Gbpsまでなので、10Gの速度は出ません。ただし回線事業者が10G対応のホームゲートウェイやルーターを貸してくれる場合があり、その場合は自分で買わなくても10Gで使えます。市販のルーターを買うのは、貸出機より機能や電波を良くしたいときです。
- 日本では2023年12月にWi-Fi 7と6GHz帯の320MHz幅が使えるようになりました。今から買うならWi-Fi 7で構いません。ただし、端末側が対応していないと恩恵は出ません。手持ちの機器がWi-Fi 6止まりなら、差を体感する場面は限られます。
- 高い機種では増えています。iPhoneは15 Pro以降(15・15 Plus・16e・17eを除く)、最近のハイエンドのAndroidも対応しています。一方で、Fire TV Stickは4K Max 第2世代だけ、SwitchBotのハブは2.4GHzのみと、テレビまわりや家電の側はまだ2.4GHzや5GHzが中心です。日本での普及率の統計は見つけられませんでした。
- 我が家の条件(30坪の平屋、パソコンは有線、6GHz対応のスマホが3台)では、5万円の差に見合わないと判断しました。マンションで周りのWi-Fiが混んでいる、階をまたいで高速につなぎたい、6GHz対応のパソコンで大きなファイルを扱う、といった条件なら判断は変わります。
この記事で見た主な情報
- NEC Aterm 7200D8BE / 19000T12BE の仕様とマニュアル(aterm.jp)
- ELECOM WRC-BE94XSD-B の製品ページとユーザーズマニュアル(elecom.co.jp)
- 価格.comの製品ページ(7200D8BE、WRC-BE94XSD-B、19000T12BE)。価格と満足度は2026年9月17日時点
- NECプラットフォームズの価格改定の案内(2026年4月1日・7月1日)
- Check Point、Microsoft、CISA、テキサス州司法長官、FCC の各発表と報道